人生再建・新しい日々編 第1話

人生再建

昨日より、ほんの少し前へ。

50代で転職して、思いがけないものを手に入れた

「ダーツの羽はありませんか?」

「何かカードゲームはありませんか?」

先日、夏休みで宿泊していた韓国の男の子がフロントへやって来ました。

今の職場は、ゴルフリゾートのフロントです。

最近は韓国からのお客様だけでなく、台湾からのお客様も少しずつ増えてきました。

働き始めた頃は、外国のお客様がフロントへ来られるたびに緊張していました。

英語は得意ではありません。

韓国語もあいさつ程度です。

翻訳機を使ったり、コミュニケーションボードを見せたりしながら、「何とか伝わってほしい」と毎日必死でした。

そんな日々が、もう数か月続いています。

その日も、夕方の一番忙しい時間でした。

最初は少し困りました。

締め作業の真っ最中だったからです。

それでも少しだけ相手をすると、その子はとても嬉しそうでした。

部屋へ戻ったと思ったら、またフロントへ。

少し話しては戻り、また顔を出す。

そんなことを何度か繰り返しました。

その子と話していて驚いたのは、英語がとても上手だったことです。

私は片言の英語しか話せません。

それでも、不思議なくらい会話になりました。

きっと、その子が私のつたない英語に付き合ってくれたのでしょう。


その子が部屋へ戻ったあと、ふと思いました。

「あれ、少し話せていたな。」

以前の私なら、きっと緊張して終わっていたと思います。

言葉に詰まり、必要なことだけを伝えて、それで終わっていたはずです。

でもその日は違いました。

完璧ではありません。

文法も間違えます。

発音もきれいではありません。

それでも、「伝えよう」という気持ちが、以前より自然に出てきました。

そして、それが少しだけ相手にも伝わったような気がしました。


転職というと、給料や休日、待遇のことを考えます。

もちろん、それはとても大切です。

でも、働き始めて初めて分かったことがあります。

仕事は、思いがけないものまで運んできてくれるということです。

毎日少しずつ英語に触れること。

外国のお客様と笑顔で話すこと。

以前なら避けていたことに、少しずつ挑戦できるようになっていました。

これは、この仕事に就く前には想像もしていなかった贈り物でした。


人生を立て直すというと、大きな成功を思い浮かべてしまいます。

でも、本当はもっと静かなものなのかもしれません。

昨日できなかったことが、今日は少しだけできる。

その小さな積み重ねが、気づけば自分を前へ運んでくれる。

最近は、そんなふうに思うようになりました。


あの頃の僕へ

転職するときは、不安しか見えなかったね。

新しい仕事に慣れるだけでも精一杯で、その先に何が待っているのかなんて考える余裕はなかった。

でも安心してほしい。

新しい仕事は、生活を支えてくれるだけじゃなかった。

少しずつ、自分自身も変えてくれたよ。

焦らなくて大丈夫。

人生は、大きく変わる日よりも、小さく変わる日の積み重ねで前へ進んでいく。

人生は、そんなふうに少しずつ立て直していくものなのかもしれません。

ああ、人生は何度でも立て直せる。
何歳からでも立て直せる。


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